開かない扉
町のみんなが千代を捜しまわっている頃、千代はルイゼとオブリィという山沿いの町にいた。
リリルのブティックのあるミシェスの隣町とは逆の隣町といったところであった。


ルイゼは千代を連れて、岩場へ行き、いきなりお気に入りの魔法を使ってみるように指示をした。

「お気に入りといわれても・・・私がまともに使える魔法って炎を出したり、風を吹かせたり、身長より小さい岩を砕くくらいしかできないわ。」

千代は相手が本職の魔法使いだと知っているので、自分に魔法を使わせる意図がはっきり見えないと、何をされるかわからない不安があった。

とにかく、何かやらなきゃ!と思い、ルイゼに向かって炎を投げかけた。


プスッ。。。


簡単に、消火されてしまった。


わかっていたことではあったが、面白くない気分になり、今度は、風を起こして石をまきあげ、ルイゼに石つぶてごと投げかけた。


コロンコロンコロン・・・ポトポト。


「救世主の力はこの程度か。贄もかわいそうだな。」


「この世界の人はほとんどの人が魔法も使えない人が多数なんでしょ?
だったら、私がこの程度でもべつに・・・」


「よくないな。」


「えっ・・・」


ルイゼは冷たい目つきで千代を見ながら言葉をつづけた。

「この世界に住む大多数の人間は、この世界を造った神と呼ばれし存在が地形の付属として生まれさせた人類だ。

そして、魔法書が読めたり、読めなくても、何かしら人間の能力を超えた能力を持った人間は皆、元の世界の記憶を持っている人類。

そして、おまえのもとの世界やその世界から宇宙につながる他の世界すべてを守る役目を担って、引き寄せられた人間。それがおまえのような救世主。

それから、本来は人間の一生を終えてしまっているのに、救世主だけのために生きることを許された魂が贄。

最後は神の補佐的仕事を担い、世界ごと時空ごとの監視をしたり、危険物を排除するために存在する魔法使い。

つまり、俺はその魔法使いというわけだ。」
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