開かない扉
私は意外に取り乱したり、頭が混乱したりしなかった。


自分が落ちてきたときいて、すぐに自分の足を調べてしまったからである。

力を入れようとすればいつもズキンと痛みが走る足には痛みがなくなっている。
感覚がなくなっているのではなく、すっかり治っているのだ。

すると、答えは1つしか出るわけない。


「ここは夢の国なんだ。」


ナオ医師はクスッと笑って

「夢の国かぁ~ははっ。君には本当のことを話しても大丈夫そうだ。」

「えっ、本当のことって・・・?」


ナオ医師は私の足を指さして言った。

「ここ、治りきってなかったよね。たぶん、君のいた世界では治らなかったはずだよ。
でも僕は治せた。」


「あ、ありがとうございます。もう全力で走ることなんてできない足だって言われていたし、まだ・・・信じられません。どういう治療法だったんですか?」


とにかく情報がほしい一心で、質問をしてみた。


「どういう治療法ねぇ・・・じゃ、ちょっとだけ実験してあげるから、手を見せて。」

「え、何ですか?手・・・あ、 っつ!」


私は手の甲をいきなり、細い針で傷つけられて声をあげた。

ひっかききずのような小さな傷だが、血がにじむ。


そしてナオ医師は、私の顔を見て、ニッコリ笑うと

「そのまま動かないでね。せ~の・・・よっと。」


はっ?????!!


「うそっ。傷がなくなったわ。確かにピリッと痛い傷があったのに・・・まさか」


「びっくりした?ここはこういう世界なんだ。
今のは魔法。医療魔法ってやつだ。でもね、僕は本来魔法使いではない。
君と同じ世界の、ただの人間なのさ。」


「えっ、ええーーーーー!!うそだぁ。こんなの見せられて私と同じ世界の人間って。
そんなわけない。だって、私はほら、魔法なんて使えないわ。」


「まぁまぁ、詳しく説明する前に名前くらい教えてくれない?」


「は、はい。七橋千代・・・あっ じゃなくて・・・チヨ・ナナハシです。」
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