開かない扉
ルイゼは千代のあごをぐいとつかんで上へ持ち上げると、

「そういう失礼なことをいう口はこの口かぁーーー?俺は生粋の魔法使いだって言ったろう。人間や贄なんて俺の足元にも及ばない。」

そういって、千代の唇にキスをした。


「う、うぐぐ・・・うぅ」

千代は座ったまま横へ倒れていった。

「ちょっと役得ってな。ははっ。((考えこむ時間あったらぐっすり寝てろ。))」


ルイゼは魔法で千代をベッドの上に運んでおいた。

千代はルイゼといっしょにいる間ずっと、緊張を緩めることはなかったのだ。

そんなことはルイゼにはお見通しであり、千代をいつ休ませようかとタイミングをはかっていた。


((かわいい救世主さん、目が覚めたら、つらい特訓が待ってるからな。
せいぜい、あとで優しい贄になぐさめてもらうといい。))

「さてと・・・俺の知りたかった魔法の呪文も、あの書庫からあらためて持ち出せたことだし、お嬢さんを指導しつつ、解読せねばな。」


ルイゼは謎の呪文の書かれた書物に手をかざし、目をとじて意識を集中させた。


「うぐっ!はぁはぁはぁ・・・くそっ・・・この呪文を何者かが封印している。
無理にこじあけようとすると、体に毒が注入されたような吐き気がする。
言い伝えでは、この呪文は時として現れるという破壊神を浄化する魔法の呪文のはず・・・。

はっ、まさか・・・すでに破壊神はこの世に存在しているというのか?
そして、その手先がミシェスの町か、近くにいるかもしれない・・・。」




翌日、千代はルイゼと見知らぬ森にいた。

ルイゼは他人に気づかれることなく練習できるようにと、ミニチュアのフィールドを作り、自分たちを小さくして新たに結界を張ったと千代に説明した。

「じゃあ、ここは、ルイゼのきったない家の中なの?」


「きったないは余計だろ!俺くらい優秀な魔導師ともなれば、このくらいのことはできるさ。これのとてつもなく大きくした魔力は神でないと、できないけどな。
ま、前置きはこのくらいで、順をおって教えてやるから、やってみろ。」


「はい!よろしくお願いします。」


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