開かない扉
千代はナオに会うまでには、リリルより魔法を使いこなしたいと思った。
((私のために先生には魔法を使わせない!痛い目なんてあわせないから。))
気持ちは勢い込んでいたものの、この世界で使った魔法は簡単な呪文の魔法や、偶然の産物的に発動できた魔法ばかり。
呪文を読むことはできても、イメージが浮かんでいないとルイゼに指摘される千代であった。
ルイゼはまず課題として、千代に風の魔法を使って、自分の思うところに落ち葉を集めることをさせた。
風が強すぎれば、落ち葉は集まるどころか森そのものを吹き飛ばしかねないし、弱すぎれば何も動かすことはできない。
「とにかく、風であっても炎であっても、魔法をイメージしておまえが思ったとおりの結果が出ないと、失敗なんだ。
今日はこんなふうに、右、(シュッ)左(シュッ)後ろ(シュッ)って落ち葉の小さな山を作って自由自在に、この小さな山を移動させてみろ。」
「はい。ちむ、りふ、る、らべ、らな・・・」
「おい、呪文は確かにあってるけどなぁ。子どもが本読みしてるんじゃね~んだよ。
まずはイメージしろ。そして、呪文は頭の中か心の中でつぶやけばいいんだ。一字一句いうんじゃなくて、スラスラと早くだ。」
「ええっ!口で一字一句つぶやくんじゃないの?つぶやくにしては長いなとは思ってたけど・・・。」
「ゆっくり本読みしてたら、燃やされちまうだろ~が!」
「あ、ははは。そうね。てっきり、魔法アニメとかロボットアニメみたいに技の名前を叫ばないとダメなんじゃないかと思ってた。」
「まぁ、もともと人間だから慣れないだろうが、ここではおまえみたいなやつはひとりで道を歩けやしないだろ~が。
ひとりでも歩きたいと思うんだったら、自分の身を守る魔法をしっかり身につけろ。
さ、ぼやぼやしてないで、どんどん続けろ。」
「あっ、はい!」
千代は何度も落ち葉が舞ったり、集まっていくイメージを繰り返し、結局、夕食の時間も忘れるほど練習した。
そして、なんとか思う位置に落ち葉を移動させることはできるようになった。