開かない扉
「千代ちゃんか…かわいい名前だ。

千代ちゃんに、何から話せばいいかな?
よし、体験してもらうのが、手っ取り早くていい。」


「体験って……?」


ナオは千代を町のはずれにある、石造りの家へと連れていった。

そこは、砦のような、お城の石垣のような、大きなお墓のような、家にしては冷たい印象で、住まいとは思えないところだった。


頭を下げて入らなければならない小さな入口の中へ入ると、大きな書棚が数多く並べられている。
そして、書棚には、たくさんの書物が並んでいた。


「こ、これは?」

「さっき僕が見せた魔法の呪文も、この本のどこかに載っている。」



「えっ! 魔法の本? これすべて? 先生はこれ全部読んで、魔法が使えるんですか?」


「いいや。かなり読んだけれど、僕が使えるのはほんの一部にしかすぎないよ。
魔法を使うには、素質が関係あるみたいなんだ。
たまたま、僕は医療魔法とか補助魔法なんかがむいてたようだ。」


「あの、攻撃魔法とかもあるんですか?よく、魔法使いが使ったりする、こう、かっこいい感じの・・・炎がボォ~とか燃えたりするやつとか。」

「本はあるよ。でも、僕には使えない。それとね、この町の人の多くはここを知らない人も多いし、知っていても、この本が見えない人が多いんだ。
本が見えても、1つか2つしか魔法が使えないとか。」


「えっ、使えない人ばかりなのに、こんな建物があるんですか?」


「おかしな世界だろ。この世界の創造者はどういう人選をして、ここに人を集め、この場所をどうしてほしかったんだろうね。
これから、何かが起こるのかもしれないね。」


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