開かない扉
「何かが起こるって何が起こるんですか?」
「それはわからない。起こるのかどうかもね。
でも、ここにある本を読める限り読んでみたんだけど、ほとんどが攻撃魔法の呪文の本であることや、僕の後にこの世界にきた数人はこの本が読めてしまうこと。
そして、今、君には本が見えていること。
この場所を知って、魔法を知り得ても、魔法を悪用しない人物は比較的年が近いこと。
何もないとは思えないんだ。
じつを言うと、千代ちゃんが、どの本を選び、どの魔法を理解するのかも僕は知りたい。
ごめん、利用するようなことをして。」
千代はナオが話し終わるまで待つことなく、ある種類の魔法の本が集まっている書棚へと近づいていた。
「ちむ・・・らぉ・・・ふぁい・・・みなぅ・・・たた・・・りむか」
千代は1冊の本を手に取るなり、読むというより、目をつむってつぶやいた。
千代の周りを涼やかな風が吹いていく。
ムッとしたカビ臭い空気が、少しさわやかになるように風が通った。
「風魔法だ・・・。ん?でも・・・」
ナオは言葉をとめた。
その続きを話すかのように、千代は「これは風ではなくて、炎の魔法。たぶん。」
「そうだ、炎だね。でもどうして・・・」
「ここは書庫。魔法の書庫なんです。だから、炎は発動しない。」
「そうか。自衛してるんだ、書庫そのものが。
もしかして、この本すべて読めるんだね。そう感じるんだね。」
「ええ。目で文字を追わないのに、心に呪文が浮かび上がってくるみたいに、読めるみたいなんです。」
「やっぱりそうか・・・。じゃあね、同じ要領で、ひきつけられる本をすべて触れてきてくれないか?」
「はい。」
そして、千代は約3時間ほど、本を手にしていたのだが・・・
3時間以上たってから、ナオが声をかけると返事がない。
ナオが千代がいた書庫近くへいくと、千代が床に倒れていたのだった。
「千代ちゃん!!!」