開かない扉

「嫁さんほったらかしにして行っちゃうの?」


千代が真っ赤な顔をして大声で叫んでいる。

ナオは慌てて振り返って千代の側に駆け寄った。


「いきなり亭主面されて、怒ったんじゃなかったの?」


「怒るわけないでしょ。結婚式も挙げてないのに嫁と言われてびっくりしたけど、うれしいかも・・・。」


「えっ。そうだったね・・・確かに式挙げてない・・・。
千代ちゃんを呼びにきたら、あいつに抱きしめられてるから・・・つい熱くなってしまって・・・。
僕は贄だし、なんでこんなに大人げないんだろう。かっこ悪いとこばかり見せてるよなぁ。」


千代は首をブンブン横に振りながら言う。

「いつも言ってるけど、私は先生のことを贄だからって思ってないからね。
契約したときも、その後も・・・ううん、この世界で見つけてもらったときから、ずっとドキドキして大好きなんだもん!
しばらく黙ってたのは、先生がオミさんのことで、私のこと許してくれなかったらどうしようって思ってたから・・・。」


ナオはいつもの笑顔にもどって、千代の頭を手で撫でたかと思うとポンと軽くたたいて


「今夜は浮気虫退治しなきゃいけないんで、僕の部屋で睡眠をとってください。
わかった?」


「はぁ~い」


ということで、いつものように、2人は夕方まで仕事をこなし、夜も更ける前には千代はナオのベッドにいた。
しかし何やら不満げな顔で・・・。


「ごめんね・・・ちょっと薬のことでまとめておかなきゃならない仕事があってさ・・・。少しだけ待ってて。」


「呼びつけたくせに、もう!寝てやるぅ!」


千代が怒ってナオに背中を向けたときだった。


ズズーーーーーン!ゴォーーーーー!


「おわっ、近いな。僕が先に見てくるから千代ちゃんはまず着替えて。」


「う、うん。」
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