開かない扉

診療所では太腿から血を流しながら結界を維持しているナオが顔をゆがめながら立っていた。


「先生、いったん、結界をやめて治療しましょう。」

ゼアは必死にナオに嘆願したが、ナオは横に首をふった。

「だめだ。結界を消したら、診療所がまるごともっていかれる!
大丈夫、千代ちゃんがトカゲやっつけてもどってきてくれる。

だからそれまでは、僕たちでなんとかするんだ。」


そのとき、オミが裏口側に近寄るトカゲに向かって剣を突き立てた。

剣から稲妻が光り、トカゲは裏口前で倒れた。


「千代さんに魔法剣作ってもらっててよかった。これなら俺も何体かなら倒せますよ。
でも、先生、俺が出れるって、結界はいったいどうなって・・・?
えっ?」


「ぎゃぁーーーー!先生っ!!」

オミが振り返ると、ナオはゼアの前で倒れていた。


患者の傷を診ていた別の医師が慌ててナオの傷を診たが、暗い表情になった。


「先生は・・・どうなっちゃうんです?」


ゼアがひきつり気味の声で質問すると、医師はこういった。


「信じがたい事実なのですが、ナオ先生はとっくに死んでいます。人間の機能は何も動いていません。しかし・・・ついさっきまで魔法使っていましたよね。
体温もあるし、足からの出血は止まってないし。・・・どういうことなんだ・・・。」


「そんなぁ。だったら、先生は死んでなんかいないじゃないの。」


ゼアが怒って返すと、

「いいえ、これが本来の贄の姿なのよ。」

「リリルさん。いったいどこへ行ってたんですか?」


リリルは話を続けた。

「ナオはこの世界へ来たときはこれよりもっと悲惨な死体だった。
だから、肉体のある人形として、神様が利用したのよ。
そして、神の力が暴走した今、人形へともどったというわけ。」


「あ・・・・あぅ・・・きいてたとはいえ、ひどい・・・。

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