開かない扉

千代は帰宅後、母親から顔がニヤけてる。不謹慎!と叱られた。
母はお葬式から帰ったこともあって、あまりに千代がうれしそうなことに不満なのだ。



それでも千代はナオに会えたことや体と頭の疲れもあって、ベッドに倒れ込むとすぐに眠りこけてしまった。

目が覚めると、もうナオの家へ行く予定の時刻がせまっていた。



「ぎゃーーー!遅れちゃう!おかあさぁ~~~ん、何か食べるもの!!!!」



「寝起きのままいきなり大きな声でなあに?・・・。それに、朝ご飯だって起こしにきたときにはぜんぜんぴくりともしなかったくせに!」


「あ゛ーーー!ごめん、疲れてたの。とにかく出かけなきゃいけないから・・・お願い!
ねっ。ねっ。」


「しょうがないわねぇ。ところでどこへ行くの。そんなにあわてて。そういえば、那美子さんが新しい獣医さんがあんたと仲良しだのどうのって・・・」


「えっ、いつ?那美子さんと会ったの?」


「そんなわけないじゃない、あっちも忙しいのに。あんたが寝てる間に電話で話したのよ。そしたらあんた、牛が生まれてもすぐ帰らなかったらしいじゃない。
那美子さんの話じゃ、すごいイケメンの先生だっていうし、おかあさんも会ってご挨拶しないとね。
なんなら、これからおかあさんも準備しようかな。」


「あっ、今日はダメ。彼だって心の準備があると思うしぃ・・・。また今度ちゃんと時間とってもらうから。今日は、準備しないで・・・ね。」


「あら残念、つまんない。((でも・・・今、彼って言ったわねぇ。まぁそのうち、こっそり、那美子さんにきいて行ってくればいいことだわね。義理の息子になってくれそうなのかしらん?))」



千代は結局、大慌てで出かけたものの、ナオの家の前にたどりつくと5分の遅刻だった。

((見た目に気にしてたら遅刻しちゃった。外に出ててくれるっていったのに、いないわ。仕方ないか・・・急患入っちゃったのかもしれないし。バカな私・・・。))

後悔する気持ちで入口を探して一歩後ろへ下がろうとしたときだった。


ドスン!!ドン!


「きゃぁ!いったぁーーーい」


何か大きな人物にはじきとばされて、千代はその場にこけてしまった。
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