開かない扉
「あ、申し訳ございません、お怪我はありませんでしたか?
うちの先生は獣医ですけども、擦り傷くらいなら人間でも治療してくれるのですぐお呼びしますよ。・・・・・あら・・・・!」
千代はお尻を自分でさすりながら自分をつきとばした大きな人物をにらみつけると、大声をあげた。
「ゼア!!!なんで、あなたがここにきてるの?」
「おひさしぶり。先生とはオーストラリアで偶然出会えたの。
開業するっていうんで、強引についてきちゃった。
千代ちゃんは、近くに住んでるの?走ってきてたみたいだし」
「ええ。私は一昨日の牛の出産があった酪農家さんへおてつだいに行ってて・・・そこで先生に会えて・・・今日ここでって約束して・・・でもびっくりだわ。」
「おじゃまだったかしら?もしかして、まだここでは告ってないとか?
ええっ!!そうなの。んじゃ、私はおじゃまよね。
先生呼んできてあげるから、それから買い物へ行ってくるわ。
しっかり、嫁さんにしてもらうのよ。」
「ぷっ。ゼアったら・・・あいかわらずね・・・恋人は先生以外には?」
「考えられるわけないでしょ?あっちでもこっちでも、私をこれだけ夢中にさせるオトコなんていないに決まってる!あんただってそうでしょ?んじゃ、がんばりなさいよ。」
ゼアはナオを大声で呼ぶと、自分はさっさと買い物に出かけていってしまった。
そして、中からナオが出てきた。
「こんにちは。ごめんね、外で待ってるつもりが鳥のご飯やらなきゃいけなくて。」
「ううん、私が遅刻しちゃったから・・・ごめんなさい。
だけど、突然びっくりしちゃったなぁ~~~ゼアがここにいるなんてきいてなかったんだもん。」
「あははは。じつはそれも予定の1つだった。ああ見えて、彼も千代ちゃんのことを気にしていたんだ。
記憶が薄れていたから、名前とか詳しいことはお互いにいえなかったんだけど、誰かのことを気にしているんだとお互い気を遣いあったりした。」
「ここでもゼアは私のライバルになったのね。きついなぁ・・・2人の絆って強いんだもん。」
「お茶いれてあるから、入って。」
「はあ~い」