乱樹(らんじゅ)の香り
脱力を、声で表現して、慧は大きなため息をついた。
「わかった。あたしが悪かった。
あんたすごいかわいいんだから、許そう、我まま。
ね一体どういう人が好みなの?」
麗の顔が突然輝いた。
慧のことは好きなのだが、隙あらば、麗にオトコを紹介しようとするので困っていたのだ。
ここで彼の名前を出してしまえばいいんだ。
そうしたら、慧も、あきらめてくれるはず。
麗の脳裏には兵庫 孝利(タカトシ)の顔があった。
同じ大学の同じ学科。
仲の良い仲間の中に彼はいる。