乱樹(らんじゅ)の香り
そっちを言ったのは瞬だった。

「何でもない」

言って、ニッコリほほ笑む。

「あいつ独り暮らしだから、様子を見に行ってやろうと思うんだけど。

あいつに今まで通りでいてほしいんなら、みんなの中に普通に麗もいるべきだと思う」 

麗は言葉に詰まった。

嫌だ。

行きたくない。

けど、瞬の言うのももっともな気もする。

ずっと避けられないためにも、今こっちの方が、何もなかったようにふるまうべきかも。

それから、瞬は耳元で言った。

「でも、あいつのうちはみんなに内緒なんだ。
 
どんなとこに住んでるか知られたら、若干素性がバレて、女の子が放っておかないかも。

嫌だろ?だから、お見舞いはオレと麗だけ、なんだけど、いい?」

何か、ダマされてる気が。

それでも麗は、うなずいてしまった。
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