乱樹(らんじゅ)の香り
「あの・・・熱、もう大丈夫なの?」

「うん。何だったんだろう。ケロッって治った」

「それは良かった」

本当だ。

隣にいても熱気が伝わってくるような体温を今はしていない。

「あのさ」

ちょっと真声の兵庫。

あたしは顔を背けたくなった。

どうせ、ろくなこと言われない。

「・・・ごめん」

ほら。

誤るのは、自分が相手に対して悪いことをしたっていう罪悪感があるってことだ。

悪いことをされた覚えはない。

「オレ、昨日朦朧としてて」

兵庫の言葉が一番罪深い。

麗の純粋な部分の心が、ざっくりと斬り付けられる。

「痛たたたた」

麗は兵庫に聞こえない声でつぶやいた。 






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