乱樹(らんじゅ)の香り
「試しただけなんだから、いちいち気にしないの。

あんまりごちゃごちゃ言ってると、彼女と玉砕させてやるんだから」

兵庫は黙った。

「あたしは、嬉しかったんだし」

兵庫はちらりと麗を見た。

「わからない」

「何が?」

「麗、自分が可愛いこと、わかってる!?

何で、オレなんだ?

しかも彼女いるのに」

そんなに苦悩されても困る。

自分にだってわからない。

「オレ、普通だと思うけどな。

我ながら。

麗にわざわざ好かれるような覚えもないし」

「ええい。うるさい。ヒトの好みにケチつけるんなら、『秘儀、ちゃぶ台返し~』」

と、麗は立ち上がって机を倒すフリをした。

「・・・とかされたくなかったら、黙りなさい」

兵庫の驚いてる目の前で、ゆっくりと座りなおす。

反対側で瞬がクックッと笑ってるのが聞こえる。





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