乱樹(らんじゅ)の香り
ほら、しっかり聞かれてる。

麗は、瞬の方を見た。

「苦労するね」

ちょっと真顔で言うと、

「オレは面倒なのが一番嫌いだ。

兵庫は、なんかものすごく面倒だな」

「だれが面倒だって?」

兵庫が麗を挟んで反応した。

「お前だって。

彼女がそんなに大事なら美人の麗に言い寄られたくらいでよろめくな。

だし、それはそれで楽しんじゃおう。

っていうんなら、あんまりごちゃごちゃ言わないことだ。

自分を正当化して逃げようとしてるのが、イライラするんだ」

「何か、誤解されてるかな。

オレは、よろめいてもいないし、言い寄られてもいないけど」

「あれ?そうなんだ」

「うん」

「昨日、麗送り届けたんだけど、行かなかったっけ?」

「来てくれた」

「何かした?」

「別に」

「…もったいない」

瞬はつぶやいた。

「じゃ、瞬が麗のこと捕まえとけば?」

「残念だけど、オレにはつかまらんし、気が重い」

「何ですって!?」

「オレは、いい加減だし、そのことをちゃんと周りにアピールしてる。

こういう一途な子を騙したりするのは、気が重いんだ」



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