乱樹(らんじゅ)の香り
「それはオレも同じだって。

正直麗に好かれて悪い気なんかする訳ないし、かなり嬉しい。でも、」

「彼女がいるもんな。残念」

「それも、今あやしくて。

でも、そういう危うい時だからこそ、麗に変えちゃう、なんて、悪くてできないし」

麗は、慧に呼ばれて、立ちあがっていたので、この辺から、聞いていなかった。

「って、それ、麗のがいいかもっておもってる?」

「まあ。

軽く言えば、そうだ。

けど、あいつオレにしたら、高嶺の花じゃん。

手が出ない。

目を、覚ましてほしい」

瞬は、笑った。

「オレも、結構面白いから、好きかも」

言うと、麗のいた席に移って、兵庫の隣に密着した。

「とくに、オレの方を向く可能性が全くないところがいいね。

頭の中、他の奴でいっぱい。

なんて、たまらない」

くすくすと瞬は笑う。

どこまで本気か、つくづく分からないやつだ。

兵庫は思った。










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