乱樹(らんじゅ)の香り

久しぶりに、慧と街で買い物中、だった。

向こうから歩いてくるカップルに麗の目はふいに釘付けになった。
何てことだ。

兵庫だった。

星の数ほど人間はいて、同じ場所で、知り合いに会う確率なんて、すごいと思う。

なのに、よりにもよって、合ってしまう。

「あ、兵庫だ」

慧も気づいたらしい。

「って、麗、大丈夫?」

大丈夫ではなかった。

隣には、仲よさそうに寄り添っている、女の子がいた。

彼女、だ。

楽しそうに、笑いあいながら歩いている。

「おいで」

慧に腕をひかれて、身を隠す。


そこから、通り過ぎてゆく二人の姿を眺めた。

彼女は背が低く、かわいい感じなのだけれど、やたら肌を露出させた服を着ている。

麗は、自分の格好を見下ろした。




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