乱樹(らんじゅ)の香り
言って、閉めたドアの前に立ったままの、兵庫の方に振り返る。

「ごめん。手伝ってほしいんだけど」

「ここで、待ってたらダメ?」

言って、肩でため息をつくと

「ま、いいか。わかった」

一緒に入ってくる。

「引く手アマタなんだね、タカちゃんって。

なのに、彼女一筋なんだ。

そんなに好き?」

言ってて、自分が痛い。

「自分こそ。

モテるのに、何でオレ、だったの?」

さっさと兵庫といた部屋にたどり着くつもりだったのに、麗は、反応してしまった。

きっちり足を止めて、振り返ってしまった。

何気なく訊いたつもりだったらしい兵庫は、麗の反応に驚いた。

兵庫まで立ち止まってしまう。

「・・・何でって」

慧や瞬にはボロクソに言われるが、麗の目には、やっぱり兵庫は麗の好みで。

ちょっとかわいい感じで。

オトコノコなのに、整ってる唇なんか、好きだなあ。

まじまじとみた。

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