乱樹(らんじゅ)の香り

乱樹の花


けれど、兵庫は元気がなかった。

隣に座っても、麗のほうへ向いてももらえない。
でも、ぼそりと

「麗、カイラに気に入られたみたいだぞ。

帰るころに、迎えに来るそうだ」

って、ソッコウでお邪魔モードに入ってるんだ。

「逃げないと」

つぶやくと、兵庫は驚いたように麗を見た。

「逃げ、ちゃうんだ」

「助けて、タカちゃん。

麗は渡さん。

とか、あいつに言って。

嘘でいいから」

兵庫の目が、戸惑って、それから笑った。

「何でオレが。

カイラの方が全然いい男だろ?」


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