乱樹(らんじゅ)の香り
それは、ちょっと麗のカンに触った。

「そうだね。

でも、そんなこと言ってたら、タカちゃんよりいい男なんて、世の中にいっぱいいるけどね」

「じゃ、そっちを選べばいい」

「どうして、ヒトの好みにケチを…」

言いかけて、ハッと気付いた。

「嫌い、なんだ。

あたしなんか」

そうだった。

タカちゃんは優しい。

だから嫌いだって、ハッキリ言えなかったんだ。

それなのに独りで舞い上がってた。

・・・のなら、こんな恥ずかしいことってない。

「ごめん。

気付かなかった。

凄い恥ずかしい」

グッサリ傷ついて、フラフラ立ち上がろうとした。

と、手をつかまれた。



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