乱樹(らんじゅ)の香り
兵庫が、困ったように麗を見ている。

「嫌ってるわけでは。

だって、カイラの方が、いいだろ?」

「そういうこと言われると、辛いって知ってる?」

兵庫は、手の力を緩めている。

「みんなに言われる。

なんで、あたしがタカちゃんを好きじゃいけないんだ」

じわっと涙が浮かんだ。

けれど、ここで泣いたんじゃ目立ち過ぎるし迷惑すぎる。

麗は目を閉じて、深呼吸した。

「そうだった」

麗は座りなおした。

ちょっと回りを見回す。

まばらな人。

誰もこっちなんか見ていない。

麗は兵庫に向き直る。

「こんなところでなんですが、場所を選んでられないので」



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