乱樹(らんじゅ)の香り
「あのさ、これ」

兵庫の手のひらに、ピアスが乗っかっていた。

シルバー色のチェーンに、赤いカタマリが垂れている。

「麗のは忘れ物になったままだから」

それでも、麗は片耳だけになってしまったピアスをしたままだった。

「って…」

「あげる」

「でも、もらう理由が」

「気に入らない?」

「かわいいけど」

言うと、空いている耳につけてくれる。

「これ。怖いね。

違う穴、作りそう」

「怖いよ~」


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