乱樹(らんじゅ)の香り
兵庫は、だけどそこから動かなくて、

「あのさ、カイラがそこで待ってるんだけど」

困ったように言った。

いきなりそんな言葉を吐かれて、麗はちょっとがっかりする。

「行ってやってくれない?」

『いやだ』

そういいたかったけれど、兵庫が真面目に頼むので、そうも言えない。

麗は、兵庫に導かれて、教室を出た。

廊下の先にカイラはいた。

いつ見ても、華のあるカイラは目立つ。

人ごみの中でも、浮き立っていそうな感じだ。

その、カイラが、麗を見つけると嬉しそうに近づいてきた。

「麗ちゃん」



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