チキンレース
咄嗟に道のはしっこにうずくまり、気づかれない様にちっさくなる。
見つかりませんように、みつかりませんように!!
絶対関わりたくないので音が止むのを待つため、目をつむる。
───…フと音が止み、静かになった。
あれ…?もう終わった…?
怖くて目を開けられないでいると、ふわっ…と仄かな柑橘の匂いと人の気配。
警戒しながらそろっと片目を開けてみる。
「…木葉?」
いきなり目の前に現れるドアップ顔。
「ぎゃっ!!」
ばちん!!
…………、あ。
反射的に平手打ちをかましてしまった……。
「………………」
「な…直(なお)、ちゃん……?」
馴れ親しんだ顔が頬を押さえてじろりとこっちを睨んでいる。
「……随分な挨拶だな」
こ、怖…!!
迫力のある睨みに思わず身を引いてしまう私は涙目で相手を見る。
「だ、だって直ちゃんだって気づかなかったもん!!知らない男の人かと…っ」
「お前は知らない奴なら手当たり次第殴んのか」
「う……」
最もな意見が返ってきて言葉に詰まる。
すっかり縮こまる私。