チキンレース
「はあ……」
びくっと顔を上げると呆れたような気まずそうな顔をする彼。
久しぶりに真っ直ぐ顔を見た。
彼は望月 直正(もちづき なおまさ)
家が近所で小学生の頃からの所謂幼馴染みという関係。
「ごめん、なさい…直ちゃん…」
「…なんでこんなとこにいんだよ」
座り込む私に手を伸ばして立たせると、制服の汚れをはらってくれる。
「が…学校の…帰り…」
どもりながら答えると直ちゃんは「ふーん…」と呟く。
さっきの喧嘩してたの…直ちゃん、なの?
人を殴り続けていた…。
「なになに〜?直正(なおまさ)、誰が居たの〜?」
ひょこっと現れたのは黒髪の青年。右目は眼帯をしている。
私は怖くて直ちゃんにしがみつく。
「翼(つばさ)…そっち終わったのか」
「うん、ばっちり。それよかお前いきなり消えるからびっくりした〜」
ちらりと視線を向けられて、またきゅっと直ちゃんの服を引っ張るとぽんぽんと頭を撫でてくれる。