幻視痛

『ま、私もあんたの事呼び捨てで呼ぶし、敬語も使わねぇ。』


………最初から使ってないじゃん。


『これからよろしくな、圭一。私達同じクラスみたいだし。』


『え!?そうなの!?』

梨音はいつ貰ったのか、入学式のパンフに書いてある、新入生クラス名簿のページを指差してそう言った。


そこには確かに、一年三組のクラス覧に、俺達二人の名前が書いてあった。


『圭一とは良い友達になれる気がするよ。』


梨音はそう言いながら、細く長い腕を差し出した。


それは俺に握手を求める合図だった。


『俺もそう思うよ。梨音。』


“よろしく”


俺達はそう言い合って、この時確かに手と手を握りあった。

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