幻視痛
『来てないよ。俺の親共働きだからさ。父さんは海外に長期出張中だし、母さんだって俺を見送ってすぐに、仕事行ったんじゃないかな。』
朝、スーツ姿で朝食の用意をしていた母さんを思い出しながら言った。
『梨音の親は今日来たの??』
きっと、いや絶対。美男美女夫婦に決まってる。
じゃなきゃ、こんな美女が生まれるわけがない。
『……………ねぇよ。』
『え??今なんて??』
『こねぇよ。あいつら。私なんかのために、わざわざ。』
梨音はそう言うと、捨てられたら子犬みたいな顔をして俯いた。