俺様プリンセス【BL】
「コーヒー淹れるから、座ってろよ」


 フィルターに二人分のレギュラーコーヒーを入れて、二人分のカップを用意する。

 もう少しで湯が沸く。

 ガスコンロの前に立ったとき。

 ヒメが後ろから抱きついてきた。


「座ってろって言っただろ」


 ピー、と鳴るやかんのふたを開けて、火を止める。

 抱きつかれたままだと動きにくくて、腹の前で交差する細い腕を掴んだ。


「恭介……」

「なに?」

「……ただいま」

「ああ。おかえり」


 するりと腕を解いたヒメは、俺のベッドに寄り掛かるようにして座った。

 テーブルにコーヒーを置いて脇に座ろうとしたら、自分の隣に来い、とばかりにヒメが床を叩く。

 座布団を引きずって指定されたそこに座ると、ヒメが身体ごと俺の方を向いた。

 膝をつき合わせるってのは、まさにこのことだ。

 テーブルを引き寄せた俺は、まずコーヒーを一口飲む。

 その間ずっと、ヒメは俺を凝視していて、俺がカップを置くと更に近付いてきた。

 膝と膝がぶつかる。

 そんなに寄ってこなくてもいいだろうに。
< 134 / 151 >

この作品をシェア

pagetop