俺様プリンセス【BL】
 ふと目に入ったデジタル時計は18:20を表示している。

 そろそろ行かなきゃヤバい。

 バッグを肩に引っ掛けるのと同時に「そういえば」と先輩が何気なく聞いてきた。


「姫チャンと一緒に居た男の子とも仲良くしてんの?」


 一緒に居た、男の子?

 そうだ、バーで会ったのはヒメだけじゃないんだ。


「ひょろっこい短髪のが居たじゃん。なんだ、それも憶えてないのか?」


「もうサッパリ」


 この後別のバイトなんで。

 俺はそう言って先輩と別れた。

 人通りの多い駅前の道を、俺は走ってレストランに向かう。

 でもその間、考えていたのはあの日のこと。

 別にヒメを疑ってるとかじゃないけど、自分が忘れているだけに色んなことが気になる。

 それに、女だと間違えて声を掛けたんだったとしても、ヒメには連れが居た。

 きっと、女じゃないって話題になるだろうし、インパクトある話題だから憶えていてもいい様な。

 でもな……俺が既にそのこと忘れてるし。

 きっと、いい感じに酒の肴になってどうでもよくなっちゃったんだろう。

 酒って、怖い。
 

< 44 / 151 >

この作品をシェア

pagetop