恋愛ごっこ
ハァ…と重い溜息をつかれる。
「咲煌寺の名前を忘れて考えてみれば?」
咲煌寺の名前を忘れる……?
そんなの無理に決まってる……
今までずっと咲煌寺の名前を背負ってきたんだから。
両親や咲煌寺にかかわってる人たちが怖いとか…そういうんじゃない。むしろ皆優しくしてくれる。
でも、自然と私には咲煌寺の名前が背負わされてたから。
紘翔の存在も、敵だとしか考えられない。
「伊織……私…どうすればいいの?」
ポスッとソファに座ったまま伊織の肩に頭を乗せてみる。
そしたら私の頭を優しく撫でる伊織の手。
「ま、あんま溜めこんじゃ駄目だからね」
「うん………伊織、今日は泊ってく??」
肩に頭をのせたまま伊織を見上げて聞いてみる。
「……いいよ。泊ってあげる」