恋愛ごっこ

「お久しぶりです。この家には執事もメイドもいませんから、あまり良いおもてなしなどできないと思いますが……」

私も紘翔も、自分の家なのに、偽った姿。

学校にいるときと同じ……。


「紘翔、私お茶を用意してくるわ。少しお願ね」

「あぁ。気をつけるんだよ?火傷なんてしないようにね」

もちろん、仲のいい婚約者も健在。

わざと。

私たちの両親に見せつけるように。


「相変わらず仲がいいわね。羨ましいわ」

部屋を出る前、そんな声が聞こえた。

分かってるくせに。

全てが偽りだってことにも。


別にずっと前からのことだし、逃れることなんて出来ないって知ってるからどうしようとも思わないけど。

……この胸の奥のモヤモヤした良く分かんない気持ちは何?

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