恋愛ごっこ
「紘翔、帰りましょう?」

教室にはもう、紘翔しかいなかった。

「あぁ、そうだね。迎えに行けなくてごめんね」

「いいのよ。早く帰りましょう?日が暮れてしまうわ」

ほら。

紘翔を目の前にしたっていつも通り。

所詮は偽りの関係なんだから、私が何かを感じる必要だってない。

私が誰を好きになろうと、紘翔が誰を好きになろうと勝手だし。

そうだよね?紘翔。

車に乗り込むまで、二人で他愛ない会話をして周りに笑顔を振りまいて。

車にのってから、先に口を開いたのは私。

「紘翔のクラスは学園祭何かやるの?」

「……何も」

「ふ~ん」

やっぱり。

私たちのクラスは何かを他人の為にやるような人間は少ない。

執事喫茶とかやるって話が通りがけに聞こえたけど、私たちはどう見ても執事なんて柄じゃない。

見た目はいい人が結構いるけど、完全に主人側の人間だから。
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