恋愛ごっこ
男達の会話から、多分この集団のリーダーは私の縄を外した男。

その男は私をソファに座らせて、目の前にお茶まで出した。

「遠慮はいらない。どうせこれからお前の両親から金を大量にいただくんだ」

この男は若い。

多分30前後。

「私の親が…そんな簡単に金出すと思ってるの?」

どうせ私を誘拐した人たちだし、自分を偽る気はない。

「お前の両親はそんなにひどい奴なのか?」

口角をあげて話すこの男のほうが、まだ普通だと思えるほどに。

別に両親を嫌いなんて思ったことはない。

生まれてから今まで、これが普通だったから。

「自分の子供を利益の為に使ったりするような人たち。そんな人間が私の為に大金なんて出す?」

でも、まぁ…最近紘翔と会うことも前より減ってきちゃったし、紘翔が私がいなくなったことに気付かないと何も始まらないけどね。

「お前もいろいろ苦労してんだな」

男の口から笑みが消えかけた。
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