恋愛ごっこ
「ねぇ、お兄さん。名前は?」

紘翔が気付くのいつになるか分からないし、暫くここにいることになるかもしれない。

聞きながら、目の前に出されたクッキーをひとつ口に入れた。

あ…美味しい。

「言えない」

「別に本名言えなんて言わないよ。なんて呼べばいい?」

本名教えてくれないことくらい最初から分かってる。

私を解放した後に本名知られてたら困るだろうし。

「じゃぁクロ…とでも呼んでくれ」

「クロ?何か意味があるの?」

それとも仲間内で呼ぶ名前?

「ペットの名前だ。にしてもお前、誘拐されたってのに呑気だな」

「まぁ…何回か経験してるし、似たようなこと。」

ほとんどは未遂だったけど。

それにこの状況じゃ焦ることもできないしね。
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