恋愛ごっこ
「天凪」

今日何度目かの、私の名前を口にする紘翔。

素の紘翔からこんなに私の名前が出てくることなんてほとんどない。

名前を呼ばれたのと同時に腕を掴まれて、廊下を歩かされた。

階段を上って、私の部屋を通り越して、紘翔が開けたのは自分の部屋の扉。

「ひろ…と……?」

ここは私の部屋じゃない。

ベッドに座った紘翔は私の肩を抱く。

この前の倉庫の中みたいに。


…………。

今気付いたけど、外は雨が降ってる。

嫌な予感……。

一人でいるより心強いけど、紘翔と二人きりって………。

紘翔は何も言わない。

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