皆川修司という男
千代子は慎二とも仲が良かった。
修司はまだ慎二とは関わっていなかったが、千代子が『二人は仲良くなれそう』なんて根拠に無い事を言い、慎二の家に行く事になった。
…慎二の家に行った事を、
後悔するハメになるとは、修司は思いもしなかった。
「慎二、友達か?」
慎二の部屋に入ってきたのは、10個上の兄だった。
森川慎一。当時大学生。
ワックスで立った短髪と、鋭い目。
少しアヒル口な口と、お洒落な服装。
そして、長身。
《ピコーン》
どこからか音が鳴った。
どうやら千代子の方だった。
「ち、千代子?」
修司は、
千代子の目がハートマークな事に気付いた。
「修司!私達、別れましょ!」
決断の早い女である。
千代子は慎一に一目ぼれし、修司は振られてしまった。
慎一はわけもわからずそこに立っていたが、
修司の反応が面白くて、ずっと笑っていた。
そして、その日から何故か慎一に虐められる日々が始まった。
何が悲しくて、
元カノの好きな人に虐められなきゃいけないのだ。
修司は虚しくなり、
また人を信じられなくなった。
「ちょっとダーツやりたいんやけど」
慎一はそう言って修司をダーツの的にした。
(この人は…絶対、殺し屋かなんかだ!)
今までに無い、
激しい被害妄想は、慎一に向けられていた。