駆け抜けた少女【完】

「近藤さんは居られるか」


ガミ声が庭先にまで聞こえ、暫く待つと声の主が四人の前に現れた。


「これは、新見さんではないですか。 どうなされましたか?」

「ああ、山南さんか。
近藤さんに私用があってな、部屋に居られるか?」

「ああ、そうですか。
近藤さんなら、部屋に居られると思いますよ」


山南は笑顔を絶やすことなく、新見を部屋へと案内しようとする。

さりげなく藤堂と矢央を自分の後ろに隠し、新見がそちらに気をいかないようにするためだ。


だが、逆にそれが仇となる。

近藤一派と対立する、もう一つの芹沢一派の新見に対し山南が自ら案内するものか?

そもそも知った家だ、案内されずとも近藤の部屋くらいわかる。


何を隠した(?)と、新見は体をずらし山南の背後を見た。


「さあさあ、新見さんこちら―…」
「どうして、此処に女がいる?」


新見に合わせ山南も体をズラしたが、新見の方が先に矢央を見つけてしまった。


こりゃ、まずいぞ。

と、永倉は額に手をやった。




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