駆け抜けた少女【完】
「芹沢さんや新見さん、一番厄介な連中にバレちまいやがった。 挙げ句の果てには、新見さんに無礼を働いたと―……」
スーッと細められていく目を直視できず、矢央の頭はどんどん下がっていくばかり。
芹沢達が去った後、矢央は永倉に嫌という程怒られて既に反省している。
余程永倉の説教が効いたのか、その後藤堂が何を言ってもしょぼくれていた。
永倉さんの次は、土方さん…ううっ、もう勘弁してぇ~!
そして新見は本来の目的だった私用を近藤に伝えると、その後は非難嵐だった。
新見と矢央は結局和解できないままで、近藤が頭を下げたことで新見も多少納得はしたが、
問題は芹沢だった。
「お前のために新見さんに頭を下げ、更にお前の素性を誤魔化すのにどんなに苦労したか」
「す、すみません」
「うむ、確かに今回の事はいつかぶち当たるとは思っていたが……手を出す相手がまずかったな」
「すみませんっ!」
泣きたくなってくる。
お世話になっている近藤に頭を下げさせたこと、些細な気持ちからの行動が大事になるなんて思っていなかった。
だが、悔やんでも後の祭り。
「いやいや、もう良いのだ。それよりも、なぁ…歳」
矢央の素性は、近藤の身内として何とか誤魔化した。
江戸から用事を使わされ京まで来、暫く面倒を見ることになった―――と。
少し無理があるが、近藤の身内というのが一番良いとの考えだった。