駆け抜けた少女【完】


土方は、更に眉間に深く皺を刻むと溜め息をつく。


問題は芹沢の発言にあった。



「―――は? 今何とおっしゃいましたか?」

「間島を、俺の小姓にしろと言ったんだ」


近藤は我が耳を疑ったが、芹沢はもう一度ゆっくりと繰り返したことで、聞き間違いじゃないことを知る。


では、何故小姓なのかと尋ねた。


すると芹沢は豪快に笑い、ただ一言「気に入った」と言った。


困ったのは言うまでもない。


芹沢にバレないためにと、今まで矢央を隠してきたのに。

バレた日が来た時のために、一番安全な言い訳だって考えたのに。


まさか、芹沢が矢央を側に置きたいなどと言うとは思ってもみなかった出来事だ。


矢央のためを思うなら、問題ばかり起こす芹沢達の側に置きたくはない。

だが、その逆に問題を起こし手のつけられない芹沢一派、特に筆頭局長の芹沢の機嫌を損ねるわけにもいかなかった。



悩みに悩んだ結果――――




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