駆け抜けた少女【完】
前川邸門前で隠れているつもりの藤堂、原田に気づいていた矢央は溜め息を吐く。
なにやってんだか……。
部屋に戻り荷物を纏めていると、藤堂に経緯を尋ねられ芹沢の小姓になるので今夜から八木邸に移ることを説明した。
すると途端に、嫌だ!嫌だ!とただをこねはじめた藤堂に驚いた。
藤堂の言い分としては、芹沢一派と共に生活なんかすれば絶対矢央が危ないと。
それと、せっかく仲良くなれた矢央と離れたくないと。
シュンとなった藤堂は、自分より年上だというのに母性本能を擽るような態度に矢央の胸はキュンとなり。
「藤堂さん、寂しくなったら突然訪問しちゃっていいですか?」
「――――え。 も、もちろんっ」
コクコクと頭がもげるんじゃないかってほどに頷く藤堂。
矢央はニコッと微笑み、部屋を後にした。
そんな経緯があって今に至るわけだが……
「もう、心配性だな……」
ずっと自分を着ける藤堂と付き合わされているらしい原田のじゃれ合いを、チラッと見て苦笑いした。
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