駆け抜けた少女【完】
そこに見回りから帰って来たらしい永倉が現れる。
「ん、矢央か」
「永倉さん……」
浅葱色のダンダラ模様の隊服に身を包む永倉は、普段と違って見えた。
隊服に身を包んでいると、さらに男度が増す感じだ。
「どうした、んなとこにいると物騒なんだ危ねぇだろ」
「あっ、えっと……その…」
躊躇いがちに話し出した矢央、まだ叱られた時の怯えが若干残る。
「芹沢さんの、小姓ねぇ…」
説明を聞いた永倉は、ふぅんと喉を鳴らしたが後は至って普通だ。
他の人のように反対もしなければ、心配もしていない様子。
「まっ、頑張んねぇ」
それだけ告げると、あっさり矢央に背を向けて前川邸に向かう。
門前で隠れていた藤堂達に何かを言い、三人共姿を消してしまった。
「………なんだろ、これ」
何だかモヤモヤしている。
ふぅと息を吐いて、もう一度前川邸を振り返ってから八木邸へと足を踏み入れた。
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