駆け抜けた少女【完】
着物の裾を膝上まで捲り上げ下りないように固定すると、バッと畳を蹴り上げ逆さまになった。
両掌だけで、浮いた体を支えたかと思うと「よっ!よっ!」と、右手、左手と交互に上げ体を揺らしていた。
「「「おお―――っ!!」」」
それを見て永倉、原田、藤堂はその身軽さに拍手喝采だった。
が、その芸はこの時代の女子がするにははしたない。
捲り上げた着物の隙間から、白く長い生足が見えたり、袖も捲り上げているため細い腕も見えている。
若い隊士達は、その姿に変に興奮を覚えるもの、見るのに困り視線を背けるものといて。
芹沢に関しては、盛大に大笑いしていたものの、それに今にも奮闘しかけている人物がのそっと立ち上がった。
矢央の背後に音もなく立った黒い影に気がついた三馬鹿トリオは、口々にヤバッ!と青ざめる。
「あーあ、あれは矢央さん泣かされますね」
「これは、大変だっ」
呑気に茶を啜る沖田は、矢央に迫る恐怖に手を貸す気はないのかニコッと笑っていた。
山南だけは慌てて、その場を取り払おうとするため立ち上がった。
――が、既に遅かった。
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