駆け抜けた少女【完】

第九話*浪士組、大阪へ



壬生浪士組に取締依頼が入ったのは文久三年、六月一日のことだった。


大坂町奉行所から、大坂で尊攘浪士等が暴れていて手がつけられないと報告を受けた壬生浪士組は取締のため大坂へ向かうことになった。


早朝に八木邸に集まった面々は、近藤、土方、芹沢、新見。


大坂へ行くのに芹沢と近藤が先導することになり、その他には平山五郎と野口健司、山南、沖田、永倉、井上、斉藤一、島田魁が参加することなった。



局長二人が屯所を留守する間、屯所に残ることになった土方は「今何と言いましたか?」と、芹沢を一睨みする。


ニヤリと笑い芹沢は、


「何度も言わせるな。
この度の大坂行きには、間島を同行させると言ったんだ」

「……ハッ、芹沢さん寝言は寝床だけにしてくだせぇ」


なにが矢央を連れて行くだ。

これは遊びではない、と、土方は呆れた素振りをしてみせるが、芹沢は冗談ではないと言う。


「矢央は剣術も扱えない娘だ、危険だとわかって出向く先に同行させるわけには行きません!」


「何が危険か。 たかが不逞浪士二名程だと報告書にも記してあるではないか」


「そいつらだけとは限らないでしょうが」


「だから、腕のたつ者を揃えたのだろう?」


うっ…と、土方は図星をさされ口ごもる。


だが、ここで易々と矢央の同行を認めるわけにはいかない。


先程も述べたように、この度の大坂行きは取締なのだ。

刀を抜くだろう。


屯所内でしか過ごしたことのない、増してや一度危ない目に合っている矢央を同行なんてもってのほかだと、土方なりに配慮しての反対だった。


しかし、芹沢は一言で土方をねじ伏せてしまう。


「間島は俺の小姓だ、君にとやかく言われたくないな。
知っているんだぞ、俺が留守にしている間やたらこき使っているそうじゃないか?」


面白くないと、芹沢は眉間に皺を寄せた。


土方は、芹沢の機嫌を損ねる訳にはいかないと苦虫を噛んだような表情をしている。



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