駆け抜けた少女【完】
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――――夜、
大坂取締りメンバーを見送りに門前にやって来た藤堂は、またしてもただをこねていた。
「矢央ちゃんが行くなら僕も行きます! 土方さん!」
「だ――っ! 何度も言わせるな、幹部がぞろぞろ出て行かれちゃこっちの仕事が出来ねぇっつってんだろぉが!」
大阪行きに矢央が加わるとは思っていなかった藤堂は、基本出張は嫌いなので、邪魔者がいない間に矢央と遊ぼうとほくそ笑んでいたが
予想と反して矢央は屯所に残らず、勝手にライバル視している沖田と永倉が同行しているのに否が応でも難癖を示した。
「平助、遊びに行くんじゃねぇし、すぐに帰ってくるって」
「だったら、新八さんが残れば?」
拗ねている。
と、永倉は大きな溜め息をつく。
色恋沙汰を持ち込むな、土方と同じ考えで藤堂に呆れているのだ。
腕を組み、そっぽ向いてしまった藤堂の肩を矢央がつつき、振り向いた藤堂にニコッと笑みを向けた。
「藤堂さんって、仕事熱心なんですね! だから、土方さんは藤堂さんを側に置いておきたいと思ったんですよ!」
「えっとお―……」
ぽりぽりと頬をかき、何と返せば言いか困り果てる。
矢央は本心からの言葉だった。
尊敬の目を向ける矢央に、土方、永倉は、良く言ったと矢央に感心していた。
あんな言われ方をしては、藤堂もこれ以上我がままは言えない。
仕方なく矢央達が発つのを見送っていた。
「土方さん! 藤堂さん! 行ってきまーす!」
「矢央、遊びじゃねぇんだ浮かれんな」
「……はぁい」
隣を歩いていた永倉に静かに怒られ意気消沈した矢央だったが、その胸は期待に満ち溢れていた。
この時代に来て初めての遠出、これが浮かれずにはいられなかった――――――
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