駆け抜けた少女【完】

「斉藤一。 俺達と同じ副長助勤で俺達の仲間だ。 だが、ちぃーっとばかり照れ屋なんで、そこんとこ配慮するように」


目をパチパチさせている矢央に言い聞かす永倉の隣では、口をパカッと開けた斉藤がいた。


その顔は益々赤く染まっていて沖田は「金魚みたいだ」と、腹を抱えて笑っていた。


「斉藤さんですか。初めまして、私―……」

「知っているから名乗らずとも良い」

「…あ、そうですか? まあ、宜しくお願いします」


崩れた体勢のままぺこりと頭を下げると、斉藤は小さく解釈した。


今まで出会ったタイプと違う斉藤に、矢央は何か質問しようとうずうずと体を揺する。


「斉藤さんって、おいくつですか? 隊長さんってことは強いんですよね? あっ、てかその前髪でちゃんと前見えてます?そう言えば―――……」



―――――ガシッ!


胡座をかいている永倉の足に上半身をよじ登らせながら、引いている斉藤に一気に質問すると

「おめぇは、今し方言った言葉を理解できねぇってか? あ?」

「ブフッ!」


永倉に上から体重をかけられ、潰れたカエルのような声を出した。


「永倉さん、矢央さん窒息しますってぇ」

「…………」


斉藤の背後に回った沖田は、斉藤の肩に顎を乗せケラケラと楽しんで見ている。


言葉と行動が合わない男だな、と、斉藤は思う。





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