駆け抜けた少女【完】

改めに出かけていった隊士達と違い、矢央にはこの度の役目はない。


そのために、一人残された矢央は隊士達よりも遅れて起床した後、食事を取り隊士達が帰ってくるのを待っていたのだが


あまりにも暇すぎたせいか、役目を無事終えて帰って来た芹沢にそれを訴えていた。



「芹沢さん、帰って来て早々にまたお酒ですか?」

「これが、美味なのではないか」

「……せっかく初めて大坂に来たんです! 何処かに連れて行って下さい!」


そう訴えると、芹沢は顎を撫でながら考える。


だが、一向に重い腰を上げなかった。


「間島、小姓の分際で芹沢さんに意見を申すな」


平山五郎はそう言うと「邪魔だ」と、矢央を部屋から追い出してしまう。


ピシャリと襖を閉める間際に見せた平山の嫌みな笑みに、カーッ!と、怒りを覚えた。


「なによっ! ケチっ!」



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