駆け抜けた少女【完】
それにしても暑い。
このままだと暑さで死んでしまうかも……と、大袈裟に考えてしまう。
恥を捨て、自分も沖田のようにはだけてみようかと思ったが脳裏には、あの鬼副長土方の鬼の形相が浮かんだ。
ブルッと、体が震えた。
そんな事をしてみろ、帰ってきたらどうなるかわかってんだろぉな。
と、空耳まで聞こえた矢央はキョロキョロと周りを見渡した。
(恐ろしい……)
結局、暑さを我慢するしかないかと思った矢央に天の恵みか、斉藤が風呂敷を差し出してきた。
「ん? なんですか?」
斉藤と風呂敷を交互に見つめる。
「俺の稽古着で良いのなら着替えろ」
「え、斉藤さん?」
斉藤の行動に疑問視したのは沖田だった。
沖田は、ガバッと起き上がり畳を這いつくばって二人のもとに寄ってくると「何を言ってんですか!」と、斉藤に問うた。
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