駆け抜けた少女【完】
斉藤は沖田を見下ろすと口を開く。
「良く考えれば、この男ばかりの集団に女が一人というのも可笑しな話だ。 出歩くと言うならば、まだ稽古着の方が安全かと思うが」
それに、答えたのは永倉。
斉藤の隣にいつの間にか立った永倉は、ふむと唸り風呂敷を矢央に渡す。
「確かに、大阪も相当物騒だ。斉藤、つまり矢央に男のふりをしろと言いてぇんだろ?」
「うむ。 斬り合いになった場合、そのなりでは動きが鈍り、こちらとしても足手まといだからな」
「つーこった。 ほら、着替えてきな」
"足手まとい"という言葉には引っ掛かりを覚えるが、稽古着の方が暑さもマシになり、斉藤の言う通り動きやすい。
文句の一つは言ってやりたかったが、取り替えされては、また暑さに耐えなくてはけなくなるので、渋々と風呂敷を抱え別の部屋へと移動した。
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