駆け抜けた少女【完】
第十話*大阪で夕涼み
*
「やったぁぁぁ!!」
――――バンッ!!
沖田は、また騒々しい矢央の登場に苦笑いした。
「うるさい!」と、永倉に怒られむくれる矢央の姿を見て、まるで自分と土方を見ているようだと。
「それで、矢央さん、何をそんなに喜んでいるのです?」
永倉に正座させられていた稽古着姿の矢央のもとに行くと、沖田は、その化けように関心している。
稽古着姿に、高く結い上げた髪愛らしさは残るものの、美少年隊士のようだった。
「あっ、えっとぉぉ…」
「こらこら、男装なのでしょう? そんな可愛い素振りをしていては、そちらの趣味の方に狙われますよ」
永倉に遠慮して小首を傾げ伺い見た矢央の肩をポンポンと叩く。
すると、シャキッと背筋を正す。
「芹沢さんに会いに行ったら、船涼みに連れて行ってくれるそうです!」
「船涼み?」
「はい! みんなに支度をすませたら、店前に集まるようにって」
みんな行くだろうか?
芹沢一派は行くだろうが、後の近藤一派は近藤がいないのに…と残るとしたら、自分も行くわけにはと悩むところだった。
芹沢は割と好きだが、やはり矢央が世話になったのは近藤なので忠義がある。
部屋を見回すと―――――
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