駆け抜けた少女【完】

第十話*大阪で夕涼み





「やったぁぁぁ!!」


――――バンッ!!


沖田は、また騒々しい矢央の登場に苦笑いした。


「うるさい!」と、永倉に怒られむくれる矢央の姿を見て、まるで自分と土方を見ているようだと。



「それで、矢央さん、何をそんなに喜んでいるのです?」


永倉に正座させられていた稽古着姿の矢央のもとに行くと、沖田は、その化けように関心している。


稽古着姿に、高く結い上げた髪愛らしさは残るものの、美少年隊士のようだった。


「あっ、えっとぉぉ…」

「こらこら、男装なのでしょう? そんな可愛い素振りをしていては、そちらの趣味の方に狙われますよ」


永倉に遠慮して小首を傾げ伺い見た矢央の肩をポンポンと叩く。

すると、シャキッと背筋を正す。


「芹沢さんに会いに行ったら、船涼みに連れて行ってくれるそうです!」

「船涼み?」

「はい! みんなに支度をすませたら、店前に集まるようにって」


みんな行くだろうか?

芹沢一派は行くだろうが、後の近藤一派は近藤がいないのに…と残るとしたら、自分も行くわけにはと悩むところだった。


芹沢は割と好きだが、やはり矢央が世話になったのは近藤なので忠義がある。


部屋を見回すと―――――





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