駆け抜けた少女【完】

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船はゆっくりと動く、そよそよと髪が風に靡き気持ちがいい。

何する事もなく隣でお酒を飲む芹沢さんとたわいない会話を交わしながら、綺麗な川の流れに視線を落とした。


綺麗だなぁ……。


この時代には、ゴミなんて一切浮かんでない。


ソッと川に手を差し入れると、スーッと線が追う。


夕日に照らされた矢央の髪がキラキラと輝き、白く透き通る肌が赤く色着くといった様子に、近くにいた野口が矢央の肩に触れた。


思わず引き寄せられるほど、美しく見えたのだ。


野口が無言のまま矢央の髪に触れようとすると、バシッと何かに手を叩かれる。


芹沢の鉄扇だった。


「この美しい物は、触れては価値を無くすやも知れん」

「す、すみません」


矢央は、きょとんしながら芹沢を見上げる。


「その髪は、夕日に照らされなお美しい。 こうして眺めておると、酒も旨さを増す」

「ど、どうも……」


おだてに弱い矢央は、ポッと頬を赤らませる。


そのうち黒くなってくるんだけどなぁ……まっ、いっか。


カラー剤で染められた髪は、時間が経つにつれ色褪せるだろうと、また現代が恋しくなった瞬間だった。


矢央が、また川に目を向けた時、急に騒がしくなった。


なんだろう(?)と、前方に顔を向けると沖田らが斉藤を囲んでいる。

その斉藤は、うずくまり「うっ」と、小さく呻き声を上げていた。


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